脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症(高脂血症)とは
脂質異常症(高脂血症)とは、血液中の脂質、具体的には「コレステロール」や「中性脂肪」の濃度が慢性的に高い状態のことです。
脂質の中で一般的に評価される項目として、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロールがあります。
総コレステロールからHDLを引いたnon-HDLコレステロールという指標も近年使われるようになっています。
従来は中性脂肪が高い、またはLDLコレステロールが高い状態を「高脂血症」と呼んでいましたが、HDLコレステロールが低い状態も同様にリスクがあるとして、これらを合わせて「脂質異常症」と呼ぶようになりました。
脂質異常症(高脂血症)は高血圧など他の生活習慣病と同様に自覚症状がほとんどなく、放置している人も多くいるのが現状で、患者数は予備軍を含めると2,000万人以上ともいわれています。50歳以上の男性の50%、60歳以上の女性の1/3が脂質異常症(高脂血症)になります。
脂質異常症(高脂血症)は動脈硬化の一因であり、放置していると動脈硬化から心筋梗塞、脳梗塞などの深刻な病気を引き起こしかねないため、適切な評価と対策が必要となります。
脂質異常症(高脂血症)の症状
脂質異常症(高脂血症)は、自覚症状を感じることはほとんどありません。稀に皮膚に湿疹のような黄色腫という腫瘤や、眼球に角膜輪などが見られることがあります。
基本は無症状のため、健康診断で見つかることが多い病気です。
LDL値が高い方、HDL値が低い方は動脈硬化が進みやすく血液の流れが悪化することにより症状が悪化することがあります。動脈瘤や脳梗塞、心筋梗塞、腎臓病のほか、足の血管が詰まる場合もあります。
年に1回は健康診断を受け、コレステロール値や中性脂肪の数値を確認しましょう。
脂質異常症(高脂血症)の原因
中高年にみられるほとんどの脂質異常症(高脂血症)は食生活をはじめとした、運動不足、喫煙など生活習慣の乱れによって生じてきます。
高カロリーの食べ物・飽和脂肪酸・コレステロール・糖質などを多く含む食品、アルコールの取り過ぎは、コレステロールや中性脂肪を増加させます。
運動不足は、中性脂肪の代謝を悪くし、喫煙はHDLコレステロールを減らします。
遺伝的な原因で生じる場合や、ホルモンの異常や薬の副作用、糖尿病などの疾患が原因の場合もあります。
◆脂質異常症(高脂血症)が進行すると生じてくる疾患
- 脳卒中
脳の血管が詰まって脳組織が死んでしまう脳梗塞、脳の血管が破れて脳に出血する脳出血があります。 - 虚血性心疾患
心臓を栄養する冠状動脈が動脈硬化で狭くなり十分な血液を送れなくなる狭心症、 細くなった動脈が詰まってしまう心筋梗塞があります。 - 閉塞性動脈硬化症
主に下肢の動脈硬化が進み血行障害が生じます。 軽症の場合は歩くと足が痛くなりますが、 最重症の方では足が先の方から腐っていきます。
これらは高血圧症を放置した場合と同様ですが、特に脂質異常症(高脂血症)は虚血性心疾患になりやすいため、注意が必要です。
脂質異常症(高脂血症)の診断基準
脂質異常症(高脂血症)の診断は血液検査によって行います。
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では、脂質異常症の診断基準は以下の通りとなっています。
脂質異常症(高脂血症)の診断基準(表)
検査項目 | 診断基準 | 診断 |
---|---|---|
LDLコレステロール | 140 mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
中性脂肪TG(トリグリセライド) | 150 mg/dL以上 | 高トリグリセライド (中性脂肪) 血症 |
HDLコレステロール | 40 mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
脂質異常症(高脂血症)は下記のいずれかを満たした時に診断します。
「 LDL(悪玉)コレステロール」や「中性脂肪」の上昇
「HDL(善玉 )コレステロール」の低下
脂質異常症(高脂血症)の治療法
脂質異常症(高脂血症)の治療は、他の生活習慣病と同様に、食事療法、運動療法、および薬物療法です。
食事療法、運動療法を行っても目標値に達成しない場合、薬物療法を行います。
食事療法
- 食べ過ぎ、脂肪分の多い食事を控え、肥満を防ぐことが重要です。
- 一日の総カロリーをとり過ぎないようにします。
- 脂肪の多い牛肉・豚肉などの肉類よりも、不飽和脂肪酸の多い青魚を摂取するようにします。
- ビタミン、ミネラル、食物繊維(海草・キノコ類・野菜)を多く摂取します。
- LDLコレステロールが高い、またはHDLコレステロールが低い場合、特に卵の黄身・レバー・すじこ・マヨネーズなどのコレステロールの量を控えめにしましょう。
- 中性脂肪が高い場合アルコールは控えめにしましょう。米・パン・めん・清涼飲料水・菓子などの糖質をとり過ぎないようにしましょう。
運動療法
運動によって、血行が良くなり、LDLコレステロールが分解されやすくなり、HDLコレステロールが増加します。持続的に運動する習慣をつけると、太りにくい体質になります。
特に中性脂肪が高い場合やHDLコレステロールが低い場合に効果的です。ウォーキング・ジョギング・スイミング・階段昇降等の有酸素運動を30分以上、週3~4回以上行うのがよいとされています。
薬物療法
食事療法と運動療法だけでは、目標値に届かなかった場合には、薬物療法を行います。
患者様の基礎疾患に応じて選択し、薬の反応を見ながら目標に到達するまで調整していきます。到達目標はご年齢や基礎疾患により異なります。
治療薬は、大きく分けるとLDLコレステロールを下げる薬と、中性脂肪を下げる薬に分類されます。
LDLコレステロールを下げる場合はスタチン系薬剤や脂質吸収抑制剤を、中性脂肪を下げる場合はフィブラート系薬剤やEPA・DHA製剤を使います。
当院での在宅医療でのサポート
当院では、主に薬物療法や生活指導を行います。
リハビリテーションやデイサービスでの運動もケアマネージャーと連携し、支援致します。